2005年09月16日

スカーペッタ,どこへ行く?(ネタバレ御免)

痕跡 (上) & 痕跡 (下)
旅前合宿ごろからこれが出てるのは知ってはいた。旅から帰ってようやく読めた。
「検屍官シリーズ」ファンでずっと読んできたのだが,どうも前作からよろしくない。
前作でベントンくんが生き返った ってのがどうしてもなじめなかった。(もともとベントンファンじゃないしなー。)
ルーシー,「ラスト・プリシンクト」だかの社主兼社長になってもあいもかわらず軽率で,どうもこの私設軍隊みたいな捜査機関自身がおとぎ話めいて感じられちゃう。
そんなおとぎ話組織,実体がよくわからないから普段抱えてる現場の問題とかもよくわからない組織に属しているスカーペッタさんが,なにかしら「活躍」できるのは古巣リッチモンドしかなかった…というのも皮肉だ。

しかし,リッチモンドへ帰っても足場の無さは決定的だ。以前にあった「やむにやまれぬ」契機が見えない。自らもその一部になっている社会(おもに州)組織の腐敗や悪意に抗って危険に身をさらしながら信じる正義を貫こうとする姿がイカしていたんだが,部外者となった彼女の行為や思いひとつひとつが軽くなってしまっているんだと思う。

州の検屍官の職にいればモルグに運ばれてくる死体とともに問題が向うからやってきて彼女はやむなくそれに関わらざるを得ず,「現実」は否応なしに「見せつけられる」。しかし夢の捜査機関に属する彼女は自らなにがしかの問題のある現場に出向く必要があり,いまや「現実」は自ら頭を突っ込んで「発見」しなければならないものになってしまった。
わざわざそれに関わっていくのは何かしらの正義感に依っているらしいんだけど,そうなると
「金持の趣味?」
と言われてもしょうがないっ。
そう,かつて痛々しかった,歳のいった女が職を失う恐怖なんか,もはやみじんもない。

今回の犯人は主人公がつとめていたころのモルグのいわば「同僚」。その彼や彼の置かれていた職場環境に対する当時の自分の関わりの「甘さ」が一応問題にはなる。しかしそれはもう過去の話であって,悔いることしかできない。昔の自分の未熟さを知るだけに終わってしまい,明日の生き方が問われることはない。

「なぜかつてそれをしなかったのだろう。自腹を切ってでもすべきだった。いまならあんなことは許さない」云々。
その当時,あなたは毎日毎日忙しく,そのうえ金ももってなかったからだよ! そして今もそんな人たちでいっぱいなんだ! フィールディングを見ててわかんないのか? 眼を覚ませ,スカーペッタさんよ  

主人公の思いの非常に多くの部分がベントンやルーシー,マリーノへの個人的感情に向かっていく。…おそらく作者の思いも。

…よくある「○○の事件簿」程度になっちゃった?  

とか言いながら次のが出たらまた読んじゃうだろうなー。
posted by doino at 04:10| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバック、ありがとうございました。
思いもよらない斬り方で、とっても新鮮!
言われてみれば、そうそう、と思うことばかりです。
私なんて、もう作者の術中にハマってしまい、
手のひらで転がされているようなもんだと気付きました(笑)。

でも続き、読んでくださいね。
きっと、立派なキャラクターものになってるでしょうけど(笑)。
そこも楽しんでいただけると良いなあ。
(基本的にそこばかり楽しんでます、私は^^;)
Posted by 紫微 at 2005年09月22日 14:26
紫微さんのブログ「乱読部屋」は今回偶然知ったのですが,他意のない,とても素敵な本読みさんだなぁと感じました。
ミステリー中心に…ということなので,今後,勝手に「ミステリー読み」のガイドにさせていただくことになろうかと思います(笑)。よろしくです。
このシリーズの続き,読みます。が,その前にまだ読んでいない「真相」を。

コメント,ありがとうございました! うれしかったです。
Posted by doino at 2005年09月22日 15:45
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